[英文契約書]consideration(約因)という概念
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1.[英文契約書]consideration(約因)という概念(equity)
英文契約書の条文を理解する上で、重要な概念として、英米法系の「consideration(約因)」を理解する必要があります。
「consideration(約因)」とは?
英文契約書の専門家がわかりやすく解説します。
2.「consideration(約因)」とは
英文契約書において頻繁に出てくる「consideration(約因)」は、英米法上の概念で、英米法では必須の要件と考えられており、「consideration(約因)」のない契約(一方の当事者が相手方に無償で義務を負う契約)は、原則として法的に保護されないものであるとしています。英文契約書上の「consideration(約因)」の翻訳としては、「約因として」「対価として」「見返として」などと文脈によって翻訳されます。これらは、契約当事者がお互いに負担を負うことによって契約上の権利義務は法的に保護されるのであるという考え方からきています。
3.契約の成立条件
大陸法である日本の民法上の考え方では、契約の成立条件は、「申込み」と「承諾」という契約当事者間の意思表示が合致することによって成立します。“申込に対して承諾があったときに成立する”ことになります。
一方、英米法では更に要件があり、その要件で重要なのが「consideration(約因)」になります。英文契約書では、契約当事者間の意思表示の合致だけではなく、「consideration(約因)」という相互の「対価関係」がなくてはならず、意思表示の合致だけでは、法的拘束性が認められないことがあります。なお、「consideration(約因)」は必ずしも同等の価値である必要はなく、またその対価は金銭に限定されておらず、対価として十分な価値のあるものである必要はないとされています。
4.まとめ
せっかく締結した契約書であっても、法的拘束性が認められないと判断されてしまっては何のための契約書なのか分かりません。英米法特有の概念ですが、海外の企業との取引を行うに際し、英米法に基づいた英文契約書を作成し、契約を締結する場合は、「consideration(約因)」について十分注意する必要があるといえます。