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法務部門は必要ですか?【企業に求められる法務とは】
お客様から「法務部門は必要ですか?」と問われることがあります。
会社の規模にかかわらず、答えは「Yes」です。
なかには「会社の規模にも寄ります」と回答される専門家の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、規模に関係なく取引も契約も発生するのが会社経営ですので、「勿論必要です」が当然の回答となります。
法務部門とは
法務部門とは、企業の「契約や取引」全般に関する法律面での”ホームドクター”にあたる役割を果たす部門です。
企業において、「契約や取引」全般に関する法律関係の問題を処理し、トラブルや紛争などによって企業に生じる損害を「未然に予防」することを主な業務としています。
企業における法務部門の認識
この法務部門について、企業ではどのように認識されているのでしょうか?
2018年の東京商工会議所の調査報告(調査対象:未上場中小企業8,667件)によると、法務担当者(兼任を含む)を「設置していない」と回答した企業が67.2%と、6割を超えています。
また、「設置している」と回答した企業においても、その人数は「1名」が5割以上となっています。
一方、同報告で経営層が企業内における「日常の準備として注力すべき分野」について何かとの問いに、80.9%が「契約・取引全般」と回答しており、「契約・取引全般」については極めて重要と認識していることが分かります。
このことから、企業法務の重要性は認識しつつも、人材不足、特に企業法務の経験を積んだ専門性の高い人材(プロフェッショナル)の不足により、いわば「法務部門に手が回っていない」状況であるといえます。
契約書は誰がチェックしている?
それでは、法務部門を設置していない企業では、契約書などのチェックは、誰が担っているのでしょうか?
前述の同調査によると、60%近くの企業がその社長自らが行っていることが分かります。企業における法務機能が機能していないがために、経営層自らが法務機能を果たさねばならず、これでは企業が健全かつ持続的に成長するためのビジネスモデルとして望ましくないことは言うまでもありません。
公正取引委員会のアンケート結果によると、東証一部上場企業のほぼ全ての企業において法務部署が設置されている状況であることが分かっています。専門的な法務部署においてリーガルリスクを回避することはもちろん、新たなビジネスの創出、市場の獲得等にも重きを置き、株主の要望に応え得る戦略的経営を実現しなければならない上場企業にとっては、当然ともいえます。
まとめ
年号も変わり、間もなく2020 年を迎える我が国のビジネス環境は大きく変化し続けています。ビジネスのグローバル化、IT技術をはじめとするイノベーションの進展やレピュテーションリスクの増大等によって、企業のリーガルリスクもこれまで以上に複雑化・多様化していくことはもはや避けられません。
こうした状況下において、他社との競争に勝っていくためには、経営にリーガルの視点が必要不可欠となっており、リーガルリスクの対応において法務部門が果たすべき役割が今後益々重要となることは認めざるを得ません。
企業がその目的を継続的な成長であると位置付けている場合、経営層は、過去の企業法務に関する概念から脱却し、これからのグローバル社会に求められる企業法務の新たな役割、そして専門的法務、スペシャリストの活用について今一度検討していかなければなりません。
寄稿者:宮原健一朗